世界中で広がりを見せる「マインドフルネス」。
企業、世界の一流の経営者、スポーツ選手、有名俳優、女優が実践しています。
グーグルやアップル社など、世界の有名企業の研修プログラムにも導入されている「マインドフルネス」について専門家のアキ・ソラーノさんにお話を伺いました。
世界最高峰のヨガ師範(E-RYT500)で、ディープマインドフルネス®ヨガの創始者、
一般社団法人ディープマインドフルネス ®脳科学協会の会長として世界を舞台に活動されているアキ・ソラーノさんはマインドフルネスの発祥の地である米国(ラスベガス)に住んでおられます。
※アキ・ソラーノさんは西洋の科学的知見に裏づけされたマインドフルネスと3500年の歴史ある東洋の
ヨガ哲学の知見を統合化した「ディープマインドフルネス®」の開発者で、
科学的視点を重んじてディープマインドフルネスを指導されています。世界中に生徒さんがいらっしゃいます。
マインドフルネスとは?
―そもそも「マインドフルネス」とはどういうものでしょうか?
マインドフルネスは「いま、ここにいる自分を感じる」実践法です。
具体的には、いま自分が体験している一瞬一瞬に意識を向け、オープンな気持ちで
思考・感情・身体感覚・周囲の状況などを受け入れる方法になります。
マインドフルネスによって、自己を抑える脳の箇所が活性化。仕事に集中できるようになります。
「マインドフルネス」を取り入れると、過去の失敗や後悔、未来への不安に巻き込まれなくなります。そして「いまこの瞬間」に起きていることへ、理解を深められます。
「マインドフルネス」は、IQ(知能指数)やEQ(心の知能指数)を高める訓練法として、世界中で注目されている方法です。実践すると、心身のバランスが整います。その結果、ストレス軽減や生産性向上、職場での幸福感や満足感をアップできます。CEOや管理職など、多忙を極める人物の多くがライフスタイルに「マインドフルネス」を取り入れています。新しい研究では、注意力・記憶力を研ぎ澄まし、IQやEQが高まることが示唆されています。自分の脳は自分でつくる、そんな時代が訪れていると言えるかもしれません。
―どんな人がいつ作り出した理論なのですか?
「マインドフルネス」の歴史は古く、主にヒンズー教や仏教、そしてヨガにおいて、実践されてきました。もちろん当時は、「マインドフルネス」という呼び名ではありませんでした。仏教界では「正念」、サンスクリット語では「Sati(サティ)」「観察行」とも呼ばれ、その歴史はすでに約3500年にもなります。
―ヨガとマインドフルネスはどういう関係でしょうか?
私はヨガの専門家でもありますので、少しヨガの話をさせてください。ヨガ哲学は、人類最古の“引き寄せの法則”ともいわれています。その核となる教えのひとつが「いまに生きよ」です。ヨガ哲学ではこれを「アタ(ATHA)」といい、最も有名なヨガ哲学書のひとつ「ヨガスートラ」のはじめに出てくる言葉でもあります。アタを実践すると、過去や未来からの情報がシャットアウトされます。ヨガでは「今、ここ」が一番幸せな場所だと説いています。煩悩から解放され真の自由を手に入れられる、というのがヨガ哲学の教えです。東洋(インド)で始まった「アタ」が、「マインドフルネス」の源流になっています。
ヨガの教えはやがて西洋へ伝わり、効果が科学的に立証されました。その後、米国を中心にストレス軽減やパフォーマンスを高めるためのメソッドとして、「マインドフルネス」が確立されました。
どのような場所で活用されているのか?
―マインドフルネスは世界のなかで、どんな場所(企業、スポーツ界、学校等々)で活用されているのですか?
企業ではグーグル、フェイスブック、マッキンゼー・アンド・カンパニー、アップル・ナイキ、twitter、ゴールドマンサックス等で活用されています。
行政・教育機関では、英国議会、米国下院、オックスフォード大学、ハーバード大学等で取り入れられ、 日本企業でも大手化粧品会社やメガバンクなどが取り入れています。著名人では、タイガーウッズ、コービー・ブライアント、マイケルジョーダン、イチロー、ビル・ゲイツ、マドンナ、アーノルドシュワルツェネッガーといった方たちが「マインドフルネス」を実践しています。
米国では特に、彼らのようなプロフェッショナルな人たちやビジネスリーダーが、「マインドフルネス」を夢中で取り入れています。
―世界的企業や超一流のプロフェッショナルの方々が実践されているのですね。
新しい研究では、会社のCEOがストレスをためると、会社の他のメンバーもストレスを感じるそうです。つまりトップが悩みや不安を抱えていると、会社全体のストレスレベルが高くなってしまいます。これでは健康的な職場環境、優れた創造性が発揮できるチームは生まれません。
企業を健全に運営するためにも、CEOのストレス軽減が大きな課題です。
CEOだけでなく、会社内でリーダーシップを発揮するすべての人にとってストレスは大敵。「マインドフルネス」には、私たちを絶え間ない緊張から解放する力があります。実践後は洞察力が深まり、瞬間的に良い判断や決定を下せるようになります。
―マインドフルネスが世界中に広がっていったきっかけは何でしょうか?
現代人は、目まぐるしく変化する社会で勝ち続けなければいけません。
この重圧が、働く人の心と身体を疲弊させ、燃え尽きてしまう人が増加しました。重圧からのストレス、不安や焦りと、どう付き合えば良いのか。模索した結果、アメリカ社会で注目されたのが、禅をはじめとする東洋の教えです。教えを取り入れた結果、アメリカ社会で欠けていた心の平安が、『いま』への集中で得られるようになる。この事実が広まり、2000年代以降、「マインドフルネス」に注目が集まりました。
東洋に受け継がれる教えを西洋的な視点で分析した結果、健康面の効果、脳に与える影響などを裏付ける、科学的な証拠が続々と得られたことも背景にあります。実際、「マインドフルネス」を導入した企業では、社員のストレスが軽減され、社員医療費の削減、企業の生産性が上がりました。このような成果が紹介されるようになった結果、「マインドフルネス」を企業研修にも取り入れる企業が増え、現在にいたります。
「マインドフルネス」が広まった理由の一つに、簡単に実践できるという点も挙げられます。「マインドフルネス」には、特別な道具はいりません。必要なのは自分自身と呼吸法と少しの時間だけ。この3つがあればいつでもどこでもできるという手軽さも、流行を後押ししました。
時や国境、人種を超えて東洋と西洋の知恵がつながった結果、「マインドフルネス」が私たちに、「個人の成功」という名の新しい風を届けてくれています。
マインドフルネスの効果について
―マインドフルネスの具体的な効果を教えて下さい。
「マインドフルネス」を実践すると、脳の機能が高まる。作業処理スピードや生産性、記憶力が向上する。集中力がアップする。感情や情緒が安定する。職場での人間関係が改善できる。ストレスが軽減できる。判断力や決断力、メンタルが強化される。親切で思いやりある心が育つ。呼吸が深まる。免疫力が向上する。睡眠の質が高まる・創造性が育まれる……といったさまざまな変化が表れます。
仕事にも、身体にも、メンタルにも、幅広い場面で良い影響が期待できます。
―ビジネスの現場ではどんなことに期待できますか。
私は日米で起業して22年になりますが、積極的にビジネスリーダーに「マインドフルネス」を指導しています。実際に「マインドフルネス」を取り入れてどのような変化があったのか。私の経験から、仕事(ビジネス)における効果とその理由をお伝えいたします。
🍀 効果その1 【ストレスや不安を軽減。回復力強化と幸福感を高める】
ビジネスシーンでは「結果」が求められます。ですが、結果だけに執着してしまうと、自律神経が乱れ、不安な気持ちが高まったり、ストレスが蓄積されたりします。この問題を解決してくれるのが「マインドフルネス」です。
新しい研究では、「マインドフルネス」の実践で従業員のストレスが軽減され、デジタル時代おいて問
われるレジリエンス(回復力)を鍛えられると示唆しています。
それだけでなく、「マインドフルネス」を実践している上司やマネージャーの部下も、感情の乱れや倦怠感の発生が低くなると確認されました。マインドフルネスを実践することで、感情が前向きになり、情緒が安定します。
常にマインドが「ON」状態になっている現代人。レジリエンスを高める取り組みが非常に重要です。「マインドフルネス」を実践すれば、より良い睡眠を促進させるなど、心身の健康に役立ちます。集中力や注意力の高まりで、働く人の幸福感を増やせる点もメリットです。
🍀 効果その2 【生産性を向上させる】
マインドフルネストレーニングは、生産性に大きな影響を及ぼします。
「職場におけるマインドフルネスプログラム」について研究している研究者によると、「マインドフルネス」の実践で3つの変化が表れます。
①集中力が強化され、パフォーマンスが向上する
②目の前にある、やるべき仕事の効率化が進む
③仕事のタスク管理が上手になる(タスク=やるべき仕事)。
「マインドフルネス」を実践すると、行動の計画と実行に係る脳の部分が活性化されます。タスク管理が上手になり、より効率的に業務を進められます。その結果、生産性が高まり、企業へ良い影響を与えます。
🍀 効果その3【優秀な人材を採用するための強力なツール】
多くの企業が、優秀な人材を確保できず苦労しています。そこで「マインドフルネス」です。厳しい労働市場において、マインドフルネスプログラムの導入は企業に競争力を与えます。グーグル、ナイキ、アップル、ゴールドマンサックス社などの大手企業がマインドフルネストレーニングに多額の投資をしているのは、優れた人材を確保するため、という理由もあるのです。
従業員の幸福と回復力に投資する会社と、そうでない会社のどちらかを選択する場合、多くの優秀な応募者は、従業員の成功により多く投資する会社を選択します。
良い人材を集めたいなら「マインドフルネス」で従業員の幸福度や心身の健康を増進し、選ばれる環境を整えましょう。
🍀効果その4【自分を律する力が高まる】
ビジネスパーソンに問われる力の一つが「自分を律する能力」です。例えば、後回しにしてしまう仕事や気乗りしない仕事を抱えている場合。これらに今すぐとりかかる力が高ければ、一人の人間としてもビジネスパーソンとしても成功しやすくなります。「マインドフルネス」を実践すればするほど、自己制御力を司る脳の「前帯状皮質」を活性化させることが立証されています。そのことで、集中力が増し、心・感情・考え・行動などを律する力が高まります。この力は仕事だけでなく、ダイエットやスポーツ、健康習慣でも効果を発揮します。
🍀 効果その5 【創造性と改革性を高める】
産業と仕事の性質が絶えず変化し、AIのような新しく破壊的技術が迫ってきています。このように、創造性と革新は不可欠なビジネス資産です。
オランダのエラスムス大学の研究者は、マインドフルネストレーニングが創造性に与える影響について、理解を深めていました。そして統計の結果、彼らはほんの数分の「マインドフルネス」練習が「発散的思考」の有意な増加につながり、また被験者が生み出すアイデアの範囲が増加する事実を発見したのです。
「マインドフルネス」に投資すると、企業はストレスを減らせます。さらに生産性が高く、優秀な人材が多く、イノベーションが大きい環境を生み出せるようになります。現代を生き抜く、創造性と改革性を高い企業、人材を得るためにも「マインドフルネス」が役立ちます。
🍀 効果その6【記憶力がアップし、仕事の効率が高まる】
ハーバード大学の研究によれば、8週間のマインドフルネスの実践により、記憶に係る脳の「海馬」の灰白質が5%増加し、萎縮していた海馬が回復したことが確認されています。私は、長年マインドフルネスの実践をしていますが、年を重ねるごとに記憶力がアップしています。記憶力が高い人と低い人がいたら、記憶力が高い人のほうが成功できます。またどんな仕事においても「考える力」が必要です。この思考力を伸ばす鍵が「記憶力」であると、実は立証されています。記憶力が高まると、人間力や心の知能指数(EQ)、非認知能力が鍛えられます。「マインドフルネス」の実践は、さらにEQが高
まることも立証されています。記憶力、思考力、EQの高いビジネスパーソンは、「マインドフルネス」の力で生み出せるのです。
🍀 効果その7 【心をリセットしてセロトニンの分泌を高める】
ビジネスシーンでは、少しの心のブレが成果に影響を与えます。だからこそ、できるだけ心の波立ちを抑えた上での、ベストパフォーマンスが求められます。過去の失敗や不安をいつまでも引きずっていては、仕事にネガティブな影響を与えてしまいます。このような時こそ、「マインドフルネス」で今に意識を向け、すべてのできごとをありのまま受け入れ、過去への執着を手放しましょう。
実践後は心を切り替えて、目の前の仕事に集中できます。「マインドフルネス」の実践で、幸福ホルモンといわれる「セロトニン」が増えるという事実も研究で立証されています。
新しい研究ではセロトニンが不足すると、不安、抑うつ気分、自己評価が低い、疲労感、イライラ、 不眠症、食欲不振、吐き気、便秘等の症状が出やすくなることも示唆されています。元気に自分らしく働くために、「マインドフルネス」で「セロトニン」を増加させましょう。
🍀 効果その8【メンタル強化】
メンタルが強い人は、仕事で成功できる確率が高くなります。メンタルが弱いと、どのようなことが起こるだろう? 失敗したらどうしよう? 仕事や自分に対して自信が持てない。周りの視線が気になる……など、悪いイメージばかりが浮かんでしまいます。さらに、判断力や集中力の低下といった現象も考えられるでしょう。
ビジネスパーソンとして成功するには、メンタルトレーニングの継続が大切です。「マインドフルネス」は、ビジネスパーソンのメンタルを強くし、パフォーマンスをより高いレベルへと押し上げてくれる存在です。メンタルが強くなれば、自分が持っている以上の力を発揮できるようになります。
メンタルは、筋肉と同じように鍛えることで徐々に強くなります。すぐに結果がでなくても、諦めずに「マインドフルネス」の鍛錬を重ねることが成功の秘訣です。 「今やれることを今やる」。この言葉は、私がビジネスをしている時に「今、この瞬間」に意識を向けるため、自分に声をかけている言葉です。そしてその絶大な効果を、日々感じています。
🍀 効果その9 【自律神経が整う】
何事にもとらわれずオープンな気持ちで「いまこの瞬間」に意識を向けると、呼吸が安定します。呼吸は自律神経の働きと深く関連している、大変重要な習慣です。プレッシャーと隣あわせのビジネスパーソンは呼吸が乱れ、交感神経が優位になりがちです。交感神経が優位な状態が続くと、血管が収縮し、血圧が上昇します。同時に心拍数も増えます。このような状態では当然、仕事にも影響が出てしまうでしょう。
「マインドフルネス」は、意識的に腹式呼吸へアプローチします。腹式呼吸は副交感神経へのスイッチ。自分の意思では動かせない自律神経ですが、唯一呼吸法によってバランスを整えられます。
―マインドフルネスはいつ、どこでやるのが効果的ですか?
答えは「いつでも、どこでも」です。ビジネス成功のための実践法や習慣はいろいろありますが、少しのスキマ時間でできるのが、「マインドフルネス」の良い部分です。歩きながら、デスクで仕事をしている時、商談中、書類作成中でも「マインドフルネス」を実践できます。
ただし、1日に1度は椅子や床に座って座禅を組むように「マインドフルネス」を実行するのがおすすめです。ポイントは座骨を床、または椅子に安定させること。背筋を伸ばすこと。胸を張ること。肩をリラックスさせること。目を閉じると気持ちが落ち着きやすくなります。
マインドフルネスの実践方法
―アキ先生の「ディープマインドフルネス」の実践方法を教えて下さい。
私が日々実践している方法をご紹介いたします。
1. 姿勢を正す。背中を真っ直ぐに伸ばし、胸を開く
2. 「今から呼吸に意識を向ける」と自分に言い聞かせる(呼吸のコマンド)
3. 呼吸のみに意識を向ける
4. 深くて、長い、安定した腹式呼吸を繰り返す(鼻呼吸)
5. 呼吸をマインドフルネスする(浅い呼吸、乱れた呼吸をしている場合は、深くて長い、安定した腹式呼吸に戻す)
6. 上の呼吸を維持しながら、呼吸以外のマインドフルネスを行う
7. 過去や未来について雑念がでてきたら、それに気づく
8. 呼吸に意識を戻し、雑念を手放す
9. 上記を繰り返す
このステップを毎日繰り返し、幸せで満たされた時間を過ごしています。
―ポイントはどういったところですか。
深くて長い、安定した腹式呼吸は意識を「いま、この瞬間」に引き寄せる磁石のような存在。呼吸という磁石を失わないように、「マインドフルネス」実践中は、呼吸に意識を向けましょう。
腹式呼吸は鼻呼吸で行います。鼻の粘膜や鼻毛は空気清浄機の役割を果たしてくれます。口や肺に細菌などを入れないためにも、鼻呼吸を意識してください。
深くて長い、安定した呼吸を助ける、呼吸筋機能を高められるのも鼻呼吸のメリットのひとつです。「集中→注意がそれる→再び集中」というサイクルを目指します。
―是非実践してみたくなりました。
「マインドフルネス」は仕事のスキルを高めてくれる最強のツールです。
人生をアップグレードさせる道先案内人のような存在でもあります。
「あなたの人生にマインドフルネスあり!」
「マインドフルネス」や「呼吸法」についてもっと知りたい! という方は、ぜひ、私の講義やセミナーを受けてみてください。
マインドフルネスや呼吸法が全く初めてという方でも、即、実践できるようにご指導させていただきます。
最後に、マインドフルネスは「免疫力」を高める効果があります。心身の健康維持や、100年時代を豊かに、
多彩な場面で活躍するスキルを目指す健康に、充実した人生を目指す全ての方におすすめです。
―本日はお忙しい中、どうもありがとうございました。
※アキ・ソラーノさんがこの度新しい著書を執筆されました。
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